2014年12月9日火曜日

仏でクリスマス「ツリー」や「クレッシュ」撤去を右派政党が市民反感の罠に

フランスの右派政党議員(UMP、FN)がクリスマスを前に意識的にクレッシュを市庁舎前に設営してみせた。わざとこれでフランス共和国憲法の上からは、1905年の政教分離法(ライシテ)を尊厳してないとする制裁を誘い込んで、市民の反感を誘ってみせた。この右派の仕掛けた挑発の罠でフランスはもっかクリスマス論議が沸騰している。クレッシュはキリスト生誕の情景を描いたもので。異教徒の三博士、牛、マリアなどのサントン人形が馬小屋の中に配置されたもので極めて宗教がかっている。
異教徒(パイヤン)の三博士がキリストの誕生を祝ったことはキリスト教の他宗教に対する優位性をここに表現しているとも取れる。このキリスト教の表象的クレッシュを公共の場である市役所の広場前に飾ることは、誰もが法の前に平等であって、宗教によって差別されないというフランス共和国の精神に反することになる。1905年の政教分離法(ライシテ laïcité)というのはフランス共和国憲法の大事な中心的柱の一つなのである。ライシテ擁護協会の要求によって、また、教会と国家の分離原理に基づいてナント行政裁判所はバンデ地方審議会へ市庁舎前庭からクレッシュを撤去する判決を出した。

そのために先週、フランス南西部のバンデ地方審議会議長で上院議会の国民運動連合(UMP)議長ブルノ・レタイユー氏は、バンデ市市庁舎の前に設営されていたクリスマスのクレッシュを撤去すべきだと、市に薦めていた。

しかしバンデ地方というのはフランスでもカトリックの伝統的に強い地方で右派の家庭ではライシテなどは通じないところがあるようだ。サルコジ支持者のパリのUMP上院議員ピエール・シャロン(Pierre Charon)などは、「もうすぐ神という語を排除することになる」「ここから、彼らは世界の一方を斬首した」と皮肉っているという。この動きを反キリスト教徒だと見ている。20007年のサルコジ政権下の内務大臣は、「ライシテの原理は、宗教的事実から出た伝統的集団領域とは無関係である」といっていた。

以下のインタヴュー対談に、簡単に1905年の政教分離法(ライシテ)を否定する極端なキリスト教徒やマリーヌ・ルペンの極右派系フロンナショナル(FN)の独善的主張がよく表現されていると思われるので掲載する。なお括弧(  )内の赤字は筆者飛田のコメントである。

ピエール・シャロンは1905年の政教分離法(ライシテ)はキリスト教だけでなくすべてのあらゆる宗教に対して平等に要求している義務であることを隠している。そしてキリスト教だけがライシテの義務を強要されていてその犠牲者になっているというシャロン氏の認識であることがわかる。しかし1905年の政教分離法(ライシテ)はフランスのすべてのあらゆる宗教の信徒が互いに尊厳しあって仲良く平等に暮らすためのもので、これらの教権派のキリスト教徒はフランスはキリスト教国家だから当然のことクレッシュやクリスマス・ツリー(サパン)は許されると考えているわけだ。もちろん、これは許されるのであるが、それは個人の宗教的信条において教会内や家庭内で飾る場合であるのなら何の問題もないということなのだ。しかし今ここで論議されているのは公共的な市庁舎の前庭や街路上に飾ることなのである。この点を隠して混同させ誤魔化して論じているのがシャロン氏や前のルポルタージュ・サンフロンチエー総裁で、後に転向してマリーヌ・ルペンの極右派系フロンナショナル(FN)党ベジエ市長になったロベール・メナー(Robert Menard)氏だ。彼らの戦略こそがフランスを二分させるものなのだ。その図式は、「キリスト教徒-イスラム教徒」「キリスト教徒-外国人移民」を分けるためである。フランス共和国のライシテの原理は、この分離を嫌ったもので、彼らの意図とはまったく正反対なのであることを知らなければならない。


-あなた(ピエール・シャロン氏Pierre Charon)は、ナント行政裁判所のバンデ地方審議会への要請であるクリスマスのクレッシュを市庁舎前から撤去する決定に反対するのはどうしてか?

 私はこの決定と、これを要求した者に対し怒った。これは挑発である。我々は以前にもクリスマス・ツリー(サパン)を排除する動きがあったのを記憶している。それはツリーが宗教的な印を帯びている場合であったからだと思う。特に、バンデでの行政裁判所の決定は地方審議会議長に対して激しい要求だったと思う。もうじき、我々の言語の中から神という言葉が削除されるようになるだろう。それは少し非常識なことだ。挑発は止めてほしい。
 
-クリスマスのクレッシュは審議会室の中のホールか、それとも市庁舎の中にすべきだったのか?

 どこの市庁舎でもサパンはあちこちにおかれている。これが宗教的な印を帯びている物であるというならば、フランス全土の教会からサパンを取り除かなければならないだろう。(シャロン氏の返答は、市庁舎の中、教会の中とここで明白に言ってないことに、印象操作の罠がある。これに注意する必要がある。ライシテは教会や家庭の中に飾るサパンを排除せよとはいってないのである)
 
 このクリスマスは単に美しい祭りであるのに、クリスマスの直前にクレッシュを撤去する決定を受け入れるのか。これは宗教とはまったく関係ないものだ。もしクリスマスを排除しようとするならば、その場合には暴動は止まらなくなる。(ここでも、ライシテ法はクリスマスの排除を言ってはいないのである。もちろんどの宗教のどの行事に関しても家庭内での宗教行事ならば何を飾ろうと尊厳されるのである。問題をシャロン氏はわざと論議を混同させて混乱を作り出しているといってよい)

-ライシテは、しかしながら公的建造物であることを要求している。

 2007年3月に(サルコジ政権下)の内務大臣の答弁がこのことを完全に説明している。(これはジャン・リュク・メランション左派党共同議長の質問で、市長によって設置されたクレッシュに関して答えたものだ) 内務大臣は、「政教分離法(ライシテ)の原理は、宗教的事実から出た伝統的集団領域とは無関係であって、そこでの結びつきが多少とも直接的なやり方であってもこれは宗教行事の執行を構成していない」このような場合の例として13世紀に出現した民衆的なクレッシュの設置があるのである。そのような場合の例としてイスラム教徒の宗教的祝日もあるのである。意味なく何でも削除するのではなく、理解しなければならない。それがみんなが一緒に暮らすということである。ホテル・デュ(L'Hôtel-Dieu)の名前をその場合には変えなければならない、イスラム教徒はこの変更を要求さえしていない。それを要求しているのは一部の現場の人間でない反宗教者なのだ。これを譲ってはならない。(ここでもシャロン氏は宗教者と非宗教者を分離して考えているが、これはライシテの思想に反するわけだ。ライシテは宗教を持っていても、又たとえ一部の持ってない人に対してでも、全ての人に課せられた義務であり尊厳であるからだ)

-同様に知事は、南仏のベジエ市市長で極右派系フロンナショナル(FN)党のロベール・メナー氏に対しても、「憲法違反」であるといっている。また法律は、「ライシテの基本原理を保障するために」メナー氏が設置したクレッシュを市庁舎前から除去するように要求しているが?

 それらは誤った判断である。やれやれだ。

-この知事の決定がどうして反・キリスト教徒だといえるのかをあなたは説明するべきだが?

 それは、キリスト教徒がこの世の一方で殺戮される場合に、それを止めるべきだと私は思うからだ。イスラム寺院の四隅の塔ミナレを焼いたり、ユダヤ教会を爆破させてはならない。馬鹿なことは止めよう。クリスマスは美しいものでクリスマスのサンタクロースを人々ができるだけ長く信ずべきだと私は思う。(それは当然それでいいのだが、ここでの問題は公共性の中での信仰表現(市庁舎前庭のクレッシュ)にあったはずだ。問題のすり替えがシャロン氏しには見受けられる。それとシャロン氏が大変な勘違いをして論じているのは、キリスト教徒の殺戮だからそれを止めるのだと言っているが、そうではないということだ。人権の上から殺戮は止めるべきものなのである。自分の同胞が殺戮されているから止めるとうのはライシテの考え方ではないのである。それはイスラム教徒の場合でも同じである。どこどこの宗教者が殺戮されているからこれと戦うとかこれに反対するとかいうのであってはならないだろう。こういうところに1905年の政教分離法(ライシテ)に対する大きな認識の欠如と誤解があるようである)


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【参考記事】

Polémique sur les crèches de Noël : «On devrait supprimer Noël dans ce cas» ironise Pierre Charon

http://www.publicsenat.fr/lcp/politique/polemique-creches-noel-devrait-supprimer-noel-cas-ironise-charon-747218-

Crèches: un piège islamophobe tendu aux laïcs et aux chrétiens.

http://blogs.mediapart.fr/blog/stephanelavignotteorg/051214/creches-un-piege-islamophobe-tendu-aux-laics-et-aux-chretiens

Crèche du conseil général. Pourquoi le tribunal interdit ce signe religieux

http://www.ouest-france.fr/creche-interdite-au-conseil-general-les-motivations-du-tribunal-3026348