2013年3月8日金曜日

メラ連続殺害事件で 死亡した兵士の父親がサルコジ前大統領を告訴

 昨年3月15日にトールーズ近くのモンターバンでモハメッド・メラに殺害された仏兵士アベル・シュノッフ氏の父親アルベール・シュノッフ氏は、メラ青年が危険な存在であることを承知でその対応を怠った当時の事件を指揮した総司令官サルコジ前大統領とベルナール・スクァルシニ仏国内秘密情報局(DCRI)長を告訴した。仏秘密警察側の失敗が問題化している矢先だけに事件は大きくなりそうだ。2月6日20時45分から同日23時45分までの長時間に渡りフランス・テレビ第3チャンネルでパリマッチ誌のデルフィン・ブレッカ氏らのルポルタージュが紹介された。

その中で深夜近くになった所でやっとこの告訴の報道とマニュエル・バルツ内相が出演することになった。が、それは多くの視聴者はテレビを離れて寝始めている時間帯であった。この番組を報道することには前から反対の圧力があった。

以前から指摘されているようにトールーズの地方警察はモハメッド・メラがアフガニスタンやパキスタンのテロリスト養成キャンプとフランスとの間を往来していることで、その危険性を内務省管轄の仏国内秘密情報局(DGSE)へ報告していた。しかし無意識的にか故意なのかその報告が無視されていたことが今、問われている。

 サルコジ氏は仏大統領選挙を前にクロード・ゲアン内相(前エリゼ大統領官邸書記総監)やスクァルシニDCRI所長を動かして、このメラ事件を偽装してテロリストの恐怖をフランス国民に扇動したのではないかと不審される所以である。

 マニュエル・バルツ内相はサルコジ前大統領下のテロ対策は、「失敗であった」として批判している。現政府は秘密を開示して透明な調査をおこなっていることを宣言した。

 メラに殺害された遺族は、「もし事前にメラを取り押さえていたら多くの人が殺害されなかったはずだ」として、「秘密警察の怠慢をた訴えている」。またメラの両親が子供の教育に無関心であったことにも批判がでている。メラの存在は大統領選挙が始まるまで事件として姿をなさないように保存されていたのかもしれない。

 しかし一番の事件の焦点は、当時この事件が起こった政治的状況は2012年6月の仏大統領選挙を前にしたその真っ最中であって、長期に渡ってフランスのテレビではこの事件が大々的に毎日連続報道されていたことが重大である。

 当時、現職であったサルコジ前大統領にとってメラ事件の与える反響は仏大統領選挙の得票に無関係であったとは思えない。それを知ってか知らないでか何の思慮もなく大々的に報道したメディアの姿勢は疑問視されるべきだろう。政治家がメディアがらみでテロリストを仕立て上げてこれを政治的な喧伝利用しているとしたらそれはどういう世界なのか背筋が凍る思いがする。

【参考記事】
Affaire Merah : un père d'un soldat tué porte plainte contre Sarkozy
http://lci.tf1.fr/france/faits-divers/affaire-merah-un-pere-d-un-soldat-tue-porte-plainte-contre-sarkozy-7225542.html