2016年1月28日木曜日

仏国籍剥奪法案で 仏大統領と意見が合わず トビラ法相が辞任

(パリ=飛田正夫2016/01/28 9:53日本標準時)27日、トビラ法務大臣が辞任した。理由は仏政府内部の主流派の意見に合わないためであるという。オランド大統領は同日これを了承した。トビラ法務大臣はキリスト教徒らが大反対した同性愛者ホモの結婚の合法化を強力に推進した大臣の一人で、そのためにこれに反対するキリスト教徒団体やこれを支持母体とする極右派系や右派政党議員から厳しく解任を迫られていた。また同様にトビラ法務大臣は、外国国籍を持つフランス人で、極度の犯罪行為を犯した二重国籍者に対しそのフランス国籍を剥奪する法案が準備されているが、これにも強力に反対してきた。そこにはフランスが二重国籍を世界で初めて採用したということもあるが、この二重国籍を否定するとフランスが許す出生地に国籍の権利が生ずるという法律がくつがえされる危険性が強くなるからだ。これは外国でフランス人家族が子供を生んだ場合なども入る。しかし多くはフランス国内で外国人家族が生んだ子供に適応される法律ということから、移民や外国人の権利が縮小化されることになる。

これを喜び支持するのが2015年のテロ襲撃事件を経験して、外国人嫌いになって右傾化している現在のフランス人の意識なのである。

サルコジ前大統領も移民の国籍を剥奪するグルノーブル宣言を出していたが、同じではない。その違いはサルコジにあっては移民に特化してスティグマ化したもので、外国人移民の子弟だけの犯罪に限り、その再犯者に対しフランス国籍を取り上げるというものであった。フランス人の子弟の再犯者には国籍を取り上げることを免除していた。その為に人種差別が問題になっていたのだ。

これに対し今回、オランドの提出しているのは、二重国籍のフランス人を対象にしているということである。逆にいうとオランドの場合にはフランス国籍しか持ってなければ、外国人移民の子弟の場合であっても、国籍は剥奪されないのである。サルコジの場合には国籍がない人間が出る可能性があったので、そういうことを仏政府が行うことは人権違反の問題もあったのである。

トビラ法務大臣の問題はこのようなフランス社会の右傾化するなかでテロ襲撃事件を移民や外国人という人種的な枠に押し込めてそこで解決するという、フランス国民の対外的な差別意識や優越意識を満足させる方策とされているのが、納得できないようだ。トビラ法相の後任には社会党(PS)議員で法律審議会議長のジャン・ジャック・ウルヴァア氏が就任する。