2014年7月3日木曜日

サルコジ仏前大統領の「拘置」そして「起訴」ルモンド紙の解説から

サルコジ氏は7月2日昼にフランスの大統領では初の拘置が終わって、今度はパリ裁判所に起訴された。もっか16区のフォンテーヌ通りにある自宅に帰って6区の事務所にも顔をだした。夜に民放テレビTF1とラジオヨーロッパ1でサルコジ氏は事件を説明することになっている。サルコジ氏には多くの裁判が今後控えていてそのほんの一部が開始したわけだが、ルモンド紙が特集を組んでいるので解説して紹介したい。

①「起訴」とはどういうことなのか?

司法調査は2月26日以来開始されていて、その第二段階に入ったもので、裁判所で裁くためにこれまでの可能な限りのすべての証拠資料が総合される。起訴は容疑者の司法調査を担当しているパトリシア・シモン(Patricia Simon)予審判事とクレール・テポー(Claire Thépaut)予審判事が決めたもの。


②ニコラ・サルコジを告訴しているのは何か?

ニコラ・サルコジを告訴しているのは主に3つある。

一つは「権力関与」と呼ばれるものだ。刑法433条第2項がこれで、5年間の禁固刑と50万ユーロ(約7500万円)の罰金の可能性がある。裁判動向を事前に察知することでサルコジ裁判を有利に運こぶために、ベッタンクール事件では裁判所内部にいた裁判官ジルベール・アジベール(Gilbert Azibert)を使って、アジベールが希望していた退職後の天下り先へサルコジが一押しして推薦する条件で裁判情報の提供がサルコジの弁護士チェリー・ヘルゾグ(Thierry Herzog)との間ではなされていた。これがサルコジにベルゾグが買い与えた2番目の携帯電話で、フランス警察に盗聴されていた。裁判所内部からこの国家機密情報を盗ませた侵害と自分のために権力を利用して裁判のなり行きを有利に変えようとした「権力関与」がサルコジ氏に問われているわけだ。そのためか、ボルドー裁判所が舞台に行われたベッタンクール裁判ではサルコジ氏の事件は何もなかったことになってしまったのかもしれない。

二つは、「積極的汚職行為」だ。これは刑法433条第1項にあるもので、10年間の禁固刑と罰金15万ユーロ(約2250万円)が課せられる。これは前項で書いたような、公的機関で働く者に対しもしくは自分自身に対しても、その役職追行実現のために、金品や地位の贈与など、優遇措置をしてはならないというものだ。積極でない「消極的汚職行為」は知らないで利用された場合である。ベッタンクール裁判の情報をサルコジに送っていたとされるパトリック・サソース最高裁重罪犯検事の場合だ。

三つ目は、「職業上の機密侵害の隠蔽」にあたり、他のものにこの機密を移し伝えることで、これは犯罪や違法になる。サルコジはジルベール・アジベール裁判官から最高裁判所内部情報を受け取っていたことがこれにあたるというもので、常習犯には刑法では10年の禁固と罰金75万ユーロ(約1億1250万円)の罰金となっている。


③歴史で最初の出来事なのか?

サルコジ自身がすでに2013年4月に、ベッタンクール事件で精神的脆弱を悪用した容疑でボルドー裁判所に起訴されている。しかしこの事件は裁判所内部からの運営情報がサルコジに流れたことにより、有利に動いたためなのかはわからないが、2013年秋に事件は存在しなかったことになった。「起訴」になった仏大統領としてはシラク仏前大統領がいる。パリ市長時代の2007年と2009年の架空雇用が問われて、シラクは「公共資金悪用」と「不法所得」「信頼の悪用」などの罪で執行猶予付き2年の禁固が決定された。しかしサルコジ氏の7月1日の「拘置」はフランスの大統領としては初めてのもので歴史的なものとなった。


④どうして「拘置」であって、「単なる出廷」ではなかったのか?

「拘置」は以前は「拘束」と呼んでいたが、「拘束」では事の重大性を意味しない。そのために、サルコジ氏の場合でも他の事件と比較しても「拘束」というのは無能力で方策として役に立たないものだった。「拘置」というのは法律的に特別な召集のかたちをとるもので、調査者の関与で容疑者を押さえその自由を取り上げ、逃走を回避し、ごまかしを防せぎ、証拠改ざんを防止することになる。

「拘置」は多くの納得できる理由が存在する場合にしか可能ではない。容疑者が犯すかあるいは犯そうとしている犯罪もしくは違反を持っている場合である。今回のサルコジの場合でもそうだがフランスでは「身柄の拘束」ではなく「拘置」を使うようになっている。詳しい数字は忘れたが、昨年だけでも「拘置」された者はかなり多い。

⑤クレール・テポー判事は明らかな反サルコジ主義者なのではないのか?

クレール・テポー(Claire Thépaut)予審判事のみがこの事件を見ているわけではない。テポー判事はパトリシア・シモン(Patricia Simon)予審判事と組みで当事件を担当している。テポー判事は盗聴録音物件を所持しているが、指令系統は別の二人のセルジュ・ツルナーユ(Serge Tounaire)判事とルネ・グルーマン(René Grouman)判事が行っている。

テポー判事は左派系司法官組合(SM)の旧メンバーであったが、これまでどこかで書かれたような組合の国家事務執行などをしたことはなかった。SMはサルコジ前仏大統領によって政教分離が著しく悪化し汚されたことを厳しく批判していた。テポー判事はルモンドに対し、自分は遊びでニコラ・サルコジを「起訴」したとは思ってない。彼はボビニーでもパリでも尊厳すべき専門家であり、有名であることはいうまでもないと答えている。

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