2016年2月18日木曜日

二つの起訴を持ったサルコジに、競争相手のジュッペ元首相も涙の弔い

(パリ=飛田正夫2016/02/18 18:52日本標準時)2012年の仏大統領選挙運動での不法運用資金に関し2月16日にニコラ・サルコジに召集がかかり、朝9時前から夜のニュース時間が終了した21時過ぎまで、延々とパリ判事の調べがあり、起訴が決まった。また、ビグマリオン(Bygmalion、Event&Cie)事件の偽造請求書での財政事件では重要参考証人として、「起訴」一歩手前の容疑者に指定されている。この日は、パリ同時テロ射殺事件でのバタクラン・コンサート・ホールでの3カ月を記念するロック演奏がマドレーヌ寺院近くにあるオリンピア劇場で、生き残りの観客を招待し2500席を埋めて開催されている。3カ月はまだ早すぎると思うが、これをテレビが特集して話題にしていた。この夜は一日中ニュースを放映しているテレビで有名な民法テレビiTélé15チャンネルとテレビ(BFMTV)16チャンネルは、フランス国営放送テレビA2が21時半に終了した頃からサッカー番組を放映したために、サルコジ前大統領の起訴された事件は余り知られなかった。この日はフランス中の新聞の殆どが休みで17日も新聞は出ないことになっていたために、サルコジ氏の起訴決定は重大事件であるにもかかわらず、メディアの騒ぎにならなかった。シオチィ議員などは、ベッタンクール事件でもサルコジは起訴されたが、証拠不十分で最終的には無罪放免された。今回も左派の執着による怨嗟であって結果は無罪で、同じ事であると言っている。このベッタンクール事件でのサルコジの無罪放免の決定は同事件の財政面での判決であって、以前として、ベッタンクール事件は裁判所盗聴事件を仕掛けた容疑でサルコジは起訴され続けているのである。サルコジは現在2つの事件で起訴されているということだ。


ベッタンクール事件での裁判所盗聴事件というのは、フランス化粧品会社の大手ロレアルの大株主でフランス№2の大富豪のベッタンクール婦人が現金を政治家に渡していたという事件で、婦人が高齢で精神疾患があり利用されていたのではないかということが問題になっていた。

このベッタンクール事件の被告人であったサルコジ前大統領は、最高裁判所の動きを知りたがっていた。サルコジの弁護士チェリー・ヘルゾーグは、裁判所内に顔の聞くジルベール・アジベール(Gilbert Azibert)判事のことをサルコジに話し、アジベールがもうすぐ定年退職するので天下り先にモナコの高等法院の席を希望していることを話した。最高裁判所内でのベッタンクール裁判の動きの情報提供と引き換え条件で、ひと押し推薦してやるからというサルコジ言葉を、サルコジの弁護士ヘルゾーグはアジベールに伝えていた。この事件はいわゆる「盗聴事件」と呼ばれているもので、これらのサルコジとサルコジの弁護士チェリー・ヘルゾーグとの携帯電話での会話が警察が仕掛けた盗聴網に引っかかって録音されていたのであった。

司法警察によって盗聴された携帯電話は、ヘルゾーグ弁護士との連絡用に、同弁護士がニースでサルコジの為に買い求め偽名ポール・ビスムッス(Paul Bismuth)の名前でサルコジに使わせていた。この事件は、職業秘密漏洩罪、権力関与(trafic d’influence)罪などでサルコジは起訴されている。この件での取り調べは一応2月6日に終了したので、公判がもうすぐ始まるかも知れない。

多くのサルコジストも今度ばかりは静まり返っている。モー市長で前国民運動連合(UMP))議長のジャン・フランソワ・コッペ氏はこれまでさんざんにサルコジの濡れ衣をかぶせられてきたという感情があるのだろう。ビグマリオン(Bygmalion、Event&Cie)ではサルコジの2日前に判事に呼ばれ、起訴をのがれて「重要参考証人」容疑者扱いで済んでいる。サルコジの弁護士チェリー・ヘルゾーグの説明ではサルコジはビグマリオン事件では「起訴」されずに「重要参考証人」ですんだので幸運なことだと言っている。しかし、この話の裏にはサルコジ前大統領が同時に今回、判事から仏大統領選挙運動の不法運用資金罪で起訴されていることを隠し言わなかったのである。勿論のこと、自分に不都合で不利な事実を言わないくても良いことは裁判であたり前なことではある。しかしその言を真面に受ける人は多いのである。

サルコジと戦う2012年の左派の大統領候補はドミニク・ストロス=カーン(Dominique Strauss-Kahn)で、同氏は国際通貨基金(IMF)総裁で前の経済相だった。フランス国民全員からダントツの人気があった。これが、メディアがかったスキャンダルで大騒ぎされて失墜した。この時のメディアの執拗ぶりは異常なものがあった。それで、あまり風采のあがらない人気のないオランドが急遽出馬したのであた。選挙日を前に対決デバ論争があって、そこで、福島の原発事故を視察してきたとサルコジはオランドの前で主張して、オランドは福島の事など何も知らないと結論してきた。ところがこれが嘘であってサルコジは東京に数時間いただけで現地福島を視察などしてなかったことが、オランドに論破されてしまった。それでサルコジは大統領選挙に負けたのである。

今回のサルコジの起訴が決まった事件を隠すメディアの姿というのもまた異常なものを感じる。

この起訴の件でサルコジの有罪が完全に決定したわけではないが、真実を顕すものが勝つのである。ボルドー市長のアラン・ジュッペ元首相は、たしかにサルコジ前大統領とは党を同じくする間柄で、2017年の仏大統領選挙のLC内代表者選出予選選挙(プリメール)の競争相手ではある。しかし、12件にも及ぶ裁判を待っているサルコジにいやみの言葉の一言も添えたのは、勝利の兆しを掴んだということだろう。そこに、「与同罪おそるべし」という言葉がるのである。これは真実を知っていながら言わないで罪を許して誤魔化して偽って慈悲を与える慈悲魔のことなのである。この異常なまでの寛容という慈悲魔が人を堕し悪くするのである。

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【参考記事】
http://www.20minutes.fr/politique/1788499-20160217-sarkozy-mis-examen-amities-juppe-phrase-cope-silence-candidats-primaire

http://www.lemonde.fr/politique/article/2016/02/17/la-mise-en-examen-de-nicolas-sarkozy-rude-coup-politique-dans-son-projet-de-reconquete-de-l-elysee_4866652_823448.html

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