2012年7月9日月曜日

トゥルーズ・モントーバン連続殺人事件 メラ青年射殺ビデオ公開で仏秘密警察介入に疑問



8日仏民放テレビTF1がメラ青年と仏秘密警察との長い交渉場面が描かれたビデオを公開した。9日12時30分からの国営テレビ3チャンネルの昼のニュースではTF1は放映を後悔して引っこめたと報道された。本当の理由はわからないが、ビデオの入手元が問われていてビデオの全体性も不明だ。しかし来週にビデオを携えて訪仏する弁護士ザイラ・モッカタリ師を牽制してメラ青年の家族の主張に対し予防策を講じた世論誘導の報道ではなかったかとも考えられている。このビデオの価値はアルジェリア出身のメラ青年が射殺されずに逮捕された可能性があったという遺族の主張を支えるものであるからだ。


どうして青年を射殺したのかが問われている。 青年の父親の弁護士ザイラ・モッカタリ師は、4月2日の時点で、「我々は2本のフィルムを手に入れた。それぞれのフィルムは同じものでモハメッド・メラが警察に対して、どうして私をころすのか?(・・・)私は無罪だ」と交渉場面が描かれたビデオであると記者会見で宣言している。同弁護士はこのビデオの真実が明かされることを望んでいると語っていたが、今回この2本のビデオを仏裁判所に提出することになり同弁護士は来週に渡仏する。


6月の仏大統領選挙を前にした3月中旬(11日、15日、19日)に仏南西部のトゥルーズとモントーバンで起きた連続殺人事件の容疑者メラ青年(32歳)はトゥールーズの自宅で射殺されたが、この射殺を実行した仏情報局や仏秘密警察の行為が法律に準拠したものであったのかどうかが上院議会で問題になっていた。それは警察側がメラ青年がアフガニスタンやパキスタンのイスラム過激派と繋がっていることを承知していて監視下に置いていたはずだが、しかしそれを当局は否定していたからだ。ベルナール・スクァルシニ仏国内秘密情報局(DCRI)長は4月3日にフランス通信(AFP)に対して、「DCRIではメラ青年のどんな手がかりも無かったし他の外国やフランス情報局も同様であった」と発言していた。


社会学者でサラフィストの専門家であるサミール・アムガァー氏などによると、事件当時に起きたイスラム過激主義と目される3人のイマムの排斥事件の場合でも、4月2日に発表されたクロード・ゲアン仏前内相(前エリゼ大統領官邸書記総監)によるこのイマム排斥というのは、サルコジ前大統領の仏大統領選挙支援のためになされたものであって、トゥールーズとモントーバンでの連続殺害事件でメラ青年射殺というフランス情報局の失策を忘れさせる批判を回避させようとしたものであったとの見解が出ていた。


同社会学者の発言のすばらしさは、「私が特に注目するのは内相がどの場面でどのコンテクストでもってこれを犯罪化させたかである」と語っている点である。つまり「その目的はというとニコラ・サルコジがイスラム主義テロリズムと強力に闘っていることを示すためであった」。さらに社会学者は、「それは同時に我々を煙幕に包み、メラ事件でのフランス情報局の闘いの失敗を忘れさせるためであった」との解説をしていることだ。(4月10日リベラション紙fr.)

【参考記事】

L'avocate du père de Merah maintient le dépôt des vidéos à la justice http://www.leparisien.fr/faits-divers/l-avocate-du-pere-de-merah-maintient-le-depot-des-videos-a-la-justice-08-07-2012-2082100.php

Enregistrements de Merah diffusés  : une enquête est ouverte
http://www.lesoir.be/actualite/france/2012-07-08/enregistrements-de-merah-diffuses-une-enquete-est-ouverte-925769.php