2017年1月18日水曜日

苦渋の7カ月後に メイ英首相 欧州離脱を説明 

(パリ=飛田正夫 日本時間;‎‎‎18/‎01/‎2017-18:59:51)欧州離脱を昨年6月23日に英国国民投票(離脱賛成51、9%。離脱反対48,1%)で決めた英国だが、1月17日午前11時45分から約50分ほどに渡り、これまで何も話さないできたテリーザ・メイ(Theresa May)英首相は、欧州離脱(Brexit)に関する初の記者会見を開催した。フランスでもテレビ24で同時通訳で中継されている。その中での基本的な英国民とメイ首相との考えは依然として変わってない。メイ英国首相は、英国は欧州共同体(EU)から出て行くが、ヨーロッパとの経済・防衛次元で関係を深め、別の大陸各国やヨーロッパとの新経済共同体を造っていきたいと述べた。英国の欧州離脱(Brexit)とは激しく急激に欧州共同体(EU)を出て行くという意味なのだが、メイ首相は規約を利用してか、2年間をかけて緩やかなスピードで欧州共同体(EU)から離脱すると発言した。そこにはこの半年以上も作戦ではあったであろうが、欧州離脱に決定的な打開策が無くて発言できなかったという英国首相の苦渋が見えた。


●欧州共同体(EU)とは離別だが、ヨーロッパとは経済連携を継続
それは「英国国民は、欧州第2位、世界第5位の経済大国で欧州共同体から出て行っても、そこで十分にやっていける」「英国は資本主義的論理で判断し、大陸の反人種差別や難民受け入れのヨーロッパ理念に巻き込まれずにそこからは自由でありたいと考えている」これが昨年の国民投票の結果であったし、この点が今回のメイ首相の講演の一番重要な点であろう。

●メイ英国首相の企業家の経済主義の考えは変わらず
当然だが、そこに英国が欧州共同体(EU)建設の理念を共有していないことが伺われるわけだ。つまり「欧州共同体設立の思想は、ユダヤ人虐殺やロマ人やホモなどを殺戮し、人間を殺す侵略戦争を許したナチスの思想を再度繰り返さないという理念に基づいたものだった。が、その後の欧州共同体加盟国はそれとは直接に関係なく、政治的・経済的な利害から欧州共同体への参入がなされたので、その利害の糸が薄くなれば当然のこと、今回の英国のように分断を計る事態になるのである。そこに理念で結ばれた欧州共同体と、金で結ばれたその後の加盟国などとの曲解した理解の異なりがあった」と言える。

●メイとサルコジの欧州共同体(EU)理解は誤り
フランス国内にもこうした金銭的利害を主張する右派「共和党」(LC)のサルコジ前大統領などは反難民・経済主義の英国を救済・包含する意味からより拡大した欧州共同体を新たに協議すべきだと提言している。これは今回のメイ英国首相の発言と全く同じで驚くべきものだ。しかしサルコジは今年の仏大統領選挙の党内予選の予選で負けてしまっている。これと同じ企業家や産業家の金儲け主義ヨーロッパ共同体の理念なのだと勘違いしているわけで、この思想がフランソワ・フィヨン元首相(共和党LC)にも強く打ち出しているのが残念である。今回のメイ英首相はそれと同じことを語ったわけである。

●テリーザ・メイ英首相の1月17日の講演の確認点
1)欧州共同体(EU)からは出てゆくが、ヨーロッパとは付き合ってゆく。ここにはEU設立の理念は嫌だが、経済的な欧州共同体を新たに作りたいと願う心情が吐露されている。それを狙っているわけである。
2)英国は国民投票の決定は変えられないのでこれを尊厳する。英国内の分裂を特に注意し結束を固めてゆく。
3)英国が欧州共同体(EU)から急激に出ていくのは危険なので、緩やかに出て行く。その交渉をヨーロッパ各国と自分がする。
4)英国は、欧州共同体(EU)を超えた独自の新経済自由貿易圏を作りたいと考えている。その対象にヨーロッパ諸国の(企業家)や他所の大陸諸国があるとしている。
5)英国は移民・難民・移動民を受け入れるが、これは優秀な者で英国に有利する者としている。ヨーロッパからのそれは良いがアフリカや中東の移民・難民の受け入れはしたくないとしている。この点が欧州共同体(EU)設立の理念と英国が乖離し受け入れない点で、非常に人種差別的な国民投票の結果であったし、メイ英国首相の考えでもある。
6)テリーザ・メイ英国首相は欧州共同体(EU)離脱によって、EUに多額の分担金を支払わずに済むと宣言した。この辺にも英国の信条が出ている。
7)しかし、テロ・防衛では欧州共同体(EU)と協力してゆくと言っていて、メイ英国首相の英国だけの利権を主張するが、欧州共同体(EU)への義務を果たしくないという、自語相違を感じるものであった。その裏には金に蝕まれた経済優先主義があるのだろう。